子宮頸がんワクチンはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防するワクチンです。
当院は接種を推奨しています。HPVへの罹患を防ぐことで、間接的にがんを予防すること。他にも母親が抗体をもっていれば生まれてくる子供に免疫を付与する可能性があること、産道を経て子供に感染させる可能性を減らすことなどが言われています。
現在、子宮頸がんは年間1万人の罹患者がおり、年間約2800人が子宮頸がんで亡くなられています。さらに死者数は漸増傾向で、罹患率においては30歳代に多くなっている傾向があり、妊娠に影響する可能性も否定できません。原因の95%がHPV(ヒトパピローマウイルス)で、特に性的接触がある人は50-80%で感染していると推計されています。(もちろん皆が頸がんになるわけではありません。)コンドームでの感染予防も可能ですが、確実性に疑問が残ります。できれば、性行為が始まる前の接種が望まれます。推奨は9-15歳です。日本産婦人科学会、日本小児科学会では接種を推奨しています。オーストラリアでは女性の80%、男性の70%が接種しており、子宮頸がんの根絶に成功するのではないかと言われています。NEJM(医学界で権威のある医学誌)でも子宮頸がんのリスクを大きく下げることが報告されています。もちろん、接種しても子宮頸がん検診は必ず受ける必要があります。検診も受けることでさらに発症率を下げることが期待されます。
発赤、疼痛、紅斑(赤くなる)、筋肉痛などの副反応は80-90%と高率で出現しますが数日で改善します。また、日本では手足に痛みやしびれ、運動障害が出るような、いわゆる「多様な症状」が報告され、2013年に厚生労働省からの積極的接種勧奨がなくなりました。しかし、それらの症状は予防接種と関係なく一定数で発症しており、ワクチンとの因果関係は証明されていません。その上で今回、2021年2月より「シルガード9」が承認され発売されています。HPVは100種類以上います。シルガード9は6、11、16、18、31、33、45、52、58型のHPVを追加予防します。これで子宮頸がんを起こすHPVの90%をカバーします。
特例を除いて公費(無料)で受けられる年齢は小学6年生~高校1年生までです。
「子宮頸がん」と聞くと、どうしても身近ではなく、将来的な健康より今を大切にする考え、ワクチンは周りの子も接種していない、子宮頸がん検診もあるから、と考えられることが多いと思います。しかし進行がんになると、ほぼ妊孕性を失い、死亡率は0.8%と決して低くはありません。
定期接種ですが子宮頸がんワクチンを接種する、しないは自己選択です。しかし、情報を知らないために接種できなかったという例はできるだけ無いようにしたいと考えております。